2012年8月15日水曜日

読書「虐殺器官」※ネタバレ注意

 終戦記念日なのに
不謹慎な題名の本だと思われるかも知れないけど
れっきとした戦争を扱った小説。
 
最近「ミレニアム(ドラゴン・タトゥーの女シリーズ)」とか
若くして亡くなられた作家さんの本が続いてる。
「虐殺器官」を書かれた伊藤計劃さんも
2009年に34歳で亡くなられている。
どちらの作家さんも
その ものすごい才能ゆえに
早く召されたのが納得できるくらいの
ストーリーや描写力 
そして知識や見識の広さ深さを感じる作家さん。
 
「虐殺器官」は近未来の戦争や内戦が主な舞台だけど
単なるSFでは無く
哲学書を読んでいるような気分になるくらい
深く考えさせられ
漠然と感じていたこと 受け入れてしまってたことを
改めて目の前に突きつけられ
「さぁ 考えろ」と言われてるような。。。
 
久しぶりに付箋だらけになった本。
気になる部分 引っかかる部分に付箋を貼って
何度も読み直す。
 
ストーリーは。。。
”テロとの闘い”で人間ひとりひとりを徹底的に管理する先進諸国。
その一方で 後進諸国では内戦や大量虐殺が急激に増加。
米軍大尉クラヴィス・シェパードはその混乱の際に
常に存在を囁かれる謎の男 ジョン・ポールを追う。。。
 
一気にネタバレですが
ジョン・ポールが内戦や虐殺を引き起こす方法は
”言葉”
虐殺には独特の匂いがあり
それを孕む場所を嗅ぎつけ
そしてジョン・ポールが見つけ出した
文法と言葉で
火を点ける。。。
 
ジョン・ポール自身が愛人との逢瀬の間に
妻と子を亡くしていること
クラヴィス自身も 植物状態の母の延命措置を
停止させたことへの答えを
まだ見つけ出せずに
戦場で死体を見る度に
地獄と母を見ること。
 
それぞれが 自身の罪と罰に苦しみ
同じ女性を愛することで
更に複雑に 思いが交錯する。。。。
 
 
 
 
暑さで思考停止していた脳に
ガツンと喝を入れられた感じ。
虐殺の描写はエグいほど良い。
戦争を美化しないから。
 
ヒトラーを選んだのが民衆であるように
現在の日本の政治家たちを選んだのも民衆。
原発に見て見ぬ振りをして
仕方ないと放置してきたのも民衆。
 
罪も罰も 総ての民衆に平等にある。
 
事が起きてから
急に正義を振りかざして 声を上げる人には
胡散臭さを感じる。
 
”テロは宗教の問題”だと
アメリカ側が発信しているニュースを
鵜呑みにできる人たちは 単純に信じてるけど
 
実は こんな風に
誰かが テロや戦争を引き起こしているのでは
ないだろうか?
 
武器を生産し 輸出している国など
戦争が無くなれば 仕事が無くなる。
そんな国の言うことを
何故 疑うこともなく 鵜呑みに出来るのか?
考えることを止め 思考停止しているから?
 
日々 選択し 答えを出して生きているのだと
改めて感じさせてくれた一冊。
それならば やっぱり
いちいち 引っかかってやろう。
考えることを 止めたら終わり。
それは 逃げることや加担することと
何も変わりは無いということ。

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