2021年3月2日火曜日

映画「すばらしき世界」※ネタバレ注意

 


先日、観に行ってきました(∩´∀`)∩。
場内に入る前に、機械の前に立って、
おでこに照準を合わせて「ピ!」って熱を測られて(笑)、
36.0と表示されました。

「おお。こういうシステムになりましたかー。」と
感慨深くなりつつ、無事、入場を果たせました(笑)。

「サワコの朝」に主演の役所広司さんが出演されていて、
観に行きたくなったのでした。

物語は、元ヤクザ者で殺人の罪で刑務所に入っていた
三上さんという男性の出所直前から始まります。

直情的で鉄砲玉気質=まっすぐな三上さんは、
持病を抱え、不安を感じながらも、
出所後は周りの人たちと少しずつ交流を深めていきます。

最初は偏見の目で三上さんを見ていた人たちも、
この社会で生きて行こうとする三上さんに、
それぞれの立場から、それぞれの情を持って、
三上さんと接するように変化していきます。。。

原作は佐木隆三さんの「身分帳」。
孤児院で育ち、人生のほとんどを少年院や刑務所で過ごした
実在の人物のお話しです。

佐木隆三さんの本は、10代か20代初めくらいの頃に、
当時はまだ少なかった犯罪のノン・フィクションとして、
殺人百科シリーズなどを、コリン・ウィルソン等の本と共に、
よく読みましたね。

コツコツとした取材力で、点を線に繋げていく人という
イメージでしたね。

映画の中の主人公の三上さんは、
湧き上がってくる熱に身を委ね、
ケンカ相手のお腹のお肉を噛み千切ろうとしますが、

それを見ていた、三上さんを取材中の
テレビ・ディレクターの女性はニヤニヤしながら
サイコパス感満載でビデオカメラを回しますが、

取材に同行していた小説家志望の男性は
恐怖のあまりにビデオカメラを奪い取り、
現場から逃げ出します。

同じ「取材者」という立ち場でも、
それぞれの道に分かれていきます。

生き抜いてきた環境から自分を支えてきたであろう、
美学や信念を変化させていく三上さんは、
苦悩しながらも真摯に、”現代社会”とされる世界に
馴染もうとします。

生真面目で丁寧な仕事をする三上さんは介護職に就き、
その現場で、知能が遅れているとされる青年と
心を通わせますが、

その青年が小突き回されている場面に出くわしても、
ヤクザ者が馬鹿にされている会話にも、
怒りを堪えます。

そして、その青年が嵐の前の強風の中で、
「嵐が来る前に摘み取った」コスモスを、
三上さんに「持って帰る?」とたずねます。
いつもの、満面の笑顔で。

たくさんのやりきれなさを抱えて、
それでも黙って生きていこうとする三上さんを、
美しいなぁと思いました。

先日、紙の方の京都新聞に、
山口組を50年以上取材されてきた
溝口敦さんのインタビューにも書かれていましたが、
組も終末期を迎えていると。

そして日本の習俗である仏教も神道も
新興宗教も信者を減らしている現代、
宗教もヤクザ社会も必要としない時代に
入ったんだと思うと。

人口減少や出生率の低下を見れば、
どんな団体も縮小したり消滅して、変化していくのは
当然といえば当然なのだなーと思います。

どんな時代にも、はみ出し者たちは存在したし、
これからも存在はするのだと思いますが、
姿形を変えていくのは、はみ出し者たちよりも
社会全体なのかも知れませんね( *´艸`)。

「ホテル・ムンバイ」を観た時もそうでしたが、
今回の「すばらしき世界」も、
沢山の課題を与えられたように感じた映画でした。