2017年10月27日金曜日

閲覧注意 読書「ローラ叫んでごらん」


お薦め本というか強烈に印象に残っている本の一冊で
これも10代の頃から何人かの方に差し上げた本です。
手元には今は残っていないので記憶を頼りにしたレビューです。

内容がショッキングでもあるので閲覧注意としました。
虐待に関する内容が含まれています。

出版情報を調べてみますと1973年サイマル出版会発行ですね。
Wikipediaさんによりますとサイマル出版会さんは
1967年に創業されて異文化、言語、文化史、国際理解、
人間などをテーマに、質の高い出版活動をされてきたのですが
1998年に廃業されているそうです。
主要なロングセラーの多くは他の出版社さんから
その後、刊行されているということで
そこからも良い本を作られてきたのだなーと思います。

んー。良い本を作っても「出版界の景気低迷」の波に
飲まれてしまったと書かれているという事は、
やはり「売り方」なんでしょうか。この話はまた別の機会に。

「ローラ叫んでごらん」の副題は
「フライパンで焼かれた少女の物語」です。
アメリカで実際に起きた話で、
文字通り、赤ちゃんだったローラはフライパンで焼かれたのです。
悪魔崇拝者だった両親に。
近年でも悪魔崇拝者の親に
電子レンジで赤ちゃんが焼かれたニュースを見ましたが
その両親自体も虐待されて育っている、
虐待の連鎖の中にいる人達なんですよね。(´・ω・`)

赤ちゃんの異常な泣き声に反応したご近所の方の通報で
奇跡的に助かったローラですが
全身に火傷を負い、火ぶくれで、
確か「葡萄のような状態だった」と表現されていたと思います。

修道女たちが働く施設に保護されたローラは、
そこで忍耐強く愛情深い修道女たちに献身的にお世話をされますが
言葉を発する事はなく、目は斜視で背骨は曲がり
歩く姿にも全く子供らしさはないままに育ちます。

著者であるリチャード・ダンブロジオは
スラムで育った移民の子で、苦学を経た臨床精神医ですが
コーヒーと煙草を手放さない精力的な女性ソーシャルワーカーと出会い
ローラの治療を依頼されます。

最初は渋々と施設を訪ねたリチャードでしたが
修道女たちの子供たちに対する、何の見返りも求めない
献身的な神のような働きぶりに胸を打たれ
ローラの治療を手探りで始めます。

数年後、徐々に言葉を発したり、感情を表し始めるローラ。
両親との再会と決別、自分が経験した事への大きな怒り。

ローラの肉体が精神に与えているダメージの大きさと
施設に居られるのは成人するまでだということを考慮して、
自立することができるようになるには手術が必要だと考えたリチャードが修道女の方々にそのことを伝えると、
修道女の皆さんの奮闘ぶりが、とても印象的でした。
たくさんのお金が必要な手術なのに
すべて無料にしてしまうスゴ技。(≧▽≦)
それも、ものすごく静かに淡々と決意を固めて素早く行動する。
その原動力は何ものでもなく、ただただ神様の代わりに行動するのだという
彼女たちの生き方そのもののように思えました。
褒められる訳でも有名になる訳でもお金をもらう訳でもない。
それでも湧き上がってくる「ただそうしたいのだ絶対に」という強い心を感じました。

そしてひっきりなしに煙草をふかしコーヒーを手離さない闘うソーシャルワーカー。
「悪癖は必要です」と言い切る彼女の働きを誰が真似をできるでしょうか?
彼女もまた、ただただ子供たちを助けるのだという固い決意で
アンテナを張り巡らし一筋の光を見落とすことなく、その光に食らいつき、怯むことなく挑み続ける。
悪癖の向こう側には、人を救わずにはいられない美しい心の女性がいました。

著者でもありローラの治療に挑んだリチャード・ダンブロジオは
その後も子供たちの治療に尽くされているそうです。

本の中で最後にローラがどうなったのか?の記憶もあるのですが
できれば、本を読んで確かめていただければと思います。(*´▽`*)

肉体的にも精神的にも、これほどまでに?と思うほど傷ついた人間も
再生する事が出来るのだという強い確信と、他者の為にただただ自分の人生を全て懸けて
それでも淡々と生きている人々の凄さにとても胸を打たれた本です。


私の記憶レビューなので、本の内容と相違もあるかもしれませんが
ご容赦くださいませ。

マリアビートルの巾着(赤)大




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